2014年10月11日土曜日

オンタリオ教育研究所の授業ってどんなんよ?


お久しぶりです、入澤です。
しばらく更新が滞ってしまいました。
課題が重なる時期にもコンスタントにブログを更新するのは難しいですね。
記事を書きためておく等方法を考えます。


さて、授業が始まって一ヶ月が経ちました。そこで今回はこちらの授業がどんな感じで行われているか、主にCurrent Issues in Teacher Educationの授業を主に取り上げて説明したいと思います。


教授はClare Kosnikという50代ぐらい?の女性の教授です。
こちらの教授はだいたいそうですが、教師として学校で働いた経験を持ち、その後大学に戻ってPhDは教育哲学の分野でとったと言っていました。高めの声とファッショナブルな服装が特徴的で、とても優しい素敵な方です。特にゆっくりと話してくれるのでリスニングに問題がある私にはとても助かります。


Clive Beckという名誉教授との共同研究が多く、近年多くの教師教育の研究、特に教職課程のプログラムのデザインに関する研究を多く発表されています。また、同時にLiteracyに関する研究も多く、最近はLiteracy Teacher Education(読み書き計算を教える教師をどう育てるのか)に関する研究も多く発表されています。ホームページもありますよ→http://literacyteaching.net/


授業に参加している生徒はだいたい20名(カナダ人が17人。中国人2人、私)。
ほぼ全員が教師として現場で働いた経験を持ち、なかには校長先生もいれば、教育委員会で人権・エクイティー委員?みたいなのを長年やっているというような人もいます。教育実習生の指導教官として教師教育に関わったという人も多いです。これは他の授業の話(結局とらなかった)ですが、教授が繰り返し「この教室に集まっている一人ひとりが貴重な学びのリソースだ。」と言っていたのが印象に残っています。これはその授業だけでなく、おそらくOISE全ての授業で共通の考え方のように感じています。特に教師教育はまだまだ発展途上の学問分野なので、現場の最先端の声が大学の教室に持ち込まれることにとても価値があるように感じます。実際、生徒の発言に反応して、教授が何度も授業中に"This is sooooo interesting!!!!"と叫ぶのをよく聴きます。教授も毎回の授業で学んでいます。


授業は1回3時間。授業ではリーディングアサインメントに基づいたディスカッション(ディスカッションというよりはダイアローグと言った方がいいかもしれません)だけでなく、皆で一緒に教師教育に関する動画を見てからディスカッションをすることもあれば、ゲストスピーカーが来てプレゼンしてくれることもあります。


また、リーディングアサインメントに基づいたディスカッションも色々な形式が取り入れられます。例えば、ある時は教授の本の2、3、4章のうちのどれか一つを生徒に課題として渡しておいて、次の授業で生徒がそれぞれの章の内容を共有し合う(2、3、4章のどれか一つを読んだ3人が集まる)ジグソー学習をしたり、リーディングアサインメントの内容に沿って形式上立場を二つにわけてディベートしたりします。何か一つの結論を出すことが目的とされることはなく、生徒一人ひとりが学びを深めることが目的とされており、学びが開かれているように感じます。


さらに、毎回の授業で生徒によるプレゼンがあります。成績評価に関係がないとシラバスに書いてあったのでおそらくやる人はそんなにいないのだろうと思っていたら、最初の授業の終わりに教授がやりたい人と呼びかけたところ、10人ぐらいさっと手を挙げていて驚きました。テーマから時間まで完全に生徒に任されており、生徒は自分の得意な分野、専門性がある分野(もちろん教師教育に関する分野)についてプレゼンします。プレゼンを聴いていて驚くのは、全員が教師なのでとにかくプレゼンが上手い!ということ。そして、一方的に情報を提供するようなプレゼンではなく、ペアやグループで考えたり、意見を共有するワークが取り入れられた双方向的なプレゼンであるということです。私も11月の半ばにプレゼンをするので、今から色々と準備しています。


そして、これが一番大事なことだと思うのですが、教室にはとても安全なコミュニティがあります。海外の大学院の授業というと、積極的に授業に参加し発言することが求められるというイメージがありますが、OISEは違うようです。もちろん教授は生徒の参加を促しはしますが、決して強制はしません。「積極的にガンガン話す人もいれば、あまり話さない人もいるよね。色んな人がいていいよね。皆がみんな、それぞれの学び方で学ぶもんね。」という前提が共有されているように感じます。人が一番学ぶのは、その人が心身の安全を感じ、自分が周りの環境に影響を与えることが出来ると実感しているときだという確信をOISEは体現しているのだと思います。私はまだまだ英語がちょっとあれなので、なかなか授業に積極的に参加することが出来ません。ですが、自分のあり方を認められ、自分の学びの手綱の持ち方を「それでいいんだよ」と言ってもらえているように感じています。


OISEは世界で10本の指に入る教育研究の集積地ですが、留学生に求めるTOEFLの点数は90点台前半です(私はこれにも満たないのに入れてしまいました。てへぺろ。)。トロント大学の他の大学院だと100前後が普通のようです。これは一体何でなんだろう?と思っていたのですが、OISEには語学的にたとえ劣っていても留学生をコミュニティに包み込み、そして違う国で教育に関わってきた彼らの経験を学びのリソースとしてコミュニティ全体に還元することが可能だという自信があるのだと思いました。


OISEにいる人は教授もスタッフも生徒も教育者としての自覚を持ち、人が健やかに学ぶことが出来る教育学的な空間に関する共通理解を持っているように思います。そのような空間に触れていることが、そもそも大きな学びの一つだと感じます。また、それぞれの教室でそのような空間を体現していく教授のスキル、人間理解からも日々学んでいます。


最後、少し話が脱線した?かもしれませんが、以上がOISEの授業の様子です。
それじゃ、今日はこの辺で。。





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