2016年5月17日火曜日

アロースミススクールの挑戦 −学習障害を治せるものに−

こんにちは、入澤です。
今日はトロントにあるアロースミススクールという学習障害がある子どもたちを対象とした学校について紹介します。今年の3月ごろの学校開放日に実際に学校に見学に行ってきました。

アロースミススクールは脳の認知機能(読み、書き、計算、ロジカルシンキング、課題解決など)に困難を抱える子どもたちへの支援に特化した私立学校として1980年にスタートしました。以来30年以上にわたって活動しており、アロースミススクールの開発したプログラムは世界15カ国以上に広がっているそうです。

アロースミスのプログラムの特徴は子どもたちの脳のどこの部位に問題があるのかを明らかにし、その部位の活動を活性化させるためのトレーニングを提供することで、学習障害自体を克服することにあります。現在、様々なテクノロジーが開発され、それらの力を借りることによって学習障害を持つ子どもたちも苦労することなく他の子どもたちと同じように教室で学ぶことができるようになってきています。このようなカリキュラムのユニバーサルデザインはとても大切なものですが、アロースミスのプログラムは全く違う可能性を示しています。学習障害による日々の生活・学習へのバリアをテクノロジーによってバイパスするのではなく、治療可能なものと捉えて治してしまうという可能性です。

この学校の設立者であるアロースミス女史が実は学習障害に長年苦しんでいた張本人であり、そして実際に自分の学習障害を克服した人でもあります。本人が話しているTED Talkがあるのでぜひ見てみて下さい。彼女が自分の力で哲学書を読み理解できるようになった時の感動がひしひしと伝わってきますよ。


アロースミスのプログラムは子どもたちの認知発達の細かなアセスメント、一人ひとりに最適化されたオーダーメイドのプログラムから成り立っています。プログラムでは視覚・聴覚への刺激(映像で片方の目を隠しているのは脳の片方への負荷を上げるため)、パソコンなどのICTをフル活用し子どもたちの脳への刺激を最大限高めています。以下の映像でプログラムの概要がわかるかと思います。


アロースミススクールでは1日4コマ分の認知トレーニングと2コマの通常授業を行うと言っていました。同様の内容のカリキュラムを持つ姉妹校も広がっていますが、このアロースミスの認知トレーニング自体もプログラムとして広まっており、特別支援教育の枠組みで実施している自治体もあるとのことです。また、アロースミス女史が大人になってから学習障害を克服したことからわかるように、プログラムは大人にも効果があり、実際に大人にもプログラムを提供しているそうです。

また、プログラムの開発や効果測定のために大学とがっつりと連携しており、近いうちにブリティッシュ・コロンビア大学との共同プロジェクトの成果が発表されるとも言っていました。

プログラムの成果についてはこちらからダウンロードできます。⇨http://www.arrowsmithschool.org/arrowsmithprogram-background/pdf/academic-skills.pdf
子どもたちの声はホームページから
http://www.arrowsmithschool.org/arrowsmithprogram-background/outcomes-prof.html


アロースミスのプログラムを行うためにはかなりの集中した時間、パソコンなど多くのICT機器が必要であり、それが拡大のためのネックになっているとのこと。ただ、プログラムの拡大を示す世界地図を見ていたら韓国にもアロースミスのプログラムがあるみたいなんですよね。なので、ぜひ日本にも広がって欲しいと思いました。全ての子どもたちの学習権を保障することを第一と考えると、営利企業の塾としてではなく、学校の特別支援教育としていつか広がって欲しいですね。

レビュー数が伸びたら、もう少し詳しい記事を上げるかも。
とりあえず、今日はここまで。


入澤










2 件のコメント:

  1. 入澤さま

    記事を興味深く拝見させていただきました。
    ありがとうございます。

    実はアロウスミスさんについて10年以上前に
    「脳は奇跡を起こす」というノーマン・ドイジさんの
    著書で知り、とても感銘を受け
    日本にもこんな学校があったら
    学校生活に困窮している子ども達や
    親御さんを救えるのにな~・・・と
    思っておりました。

    私自身も学習障害傾向があり
    聴覚記名が弱くワーキングメモリーも
    低いように感じております。

    仕事では障がい児の発達支援を
    していますので、
    子ども達を通して自分の弱さ、苦手さも
    感じずにはいられません。

    日本でも学習障害向けの支援や手法が
    多々開発されていますが
    どちらかというと苦手な部分ではなく
    得意な部分を探して補っていく手法が
    メインです。

    アロウスミスさんの編み出した
    脳に直接アプローチするものではありません。

    私も自分で脳トレを試してみたりしていますが
    一人ではなかなか長続きしません。

    今回、入澤さまがアップして下さった
    動画やPDFなどとても貴重です。

    ただ、私は英語がまったく分からないので
    日本語版があるといいな~と思いました。

    また韓国ではアロウスミス校もあるとかで
    日本にも導入されることを願っています。

    私のように大人になっても
    苦しんでいる方々が多いと思います。

    入澤さまがまた、アロウスミス校に
    また何らかのコネクションがあれば
    再度アップして下さると嬉しいです。

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  2. 発達障害を抱えるお子さんは本当に多いです。
    それが、改善できるとなれば、少子高齢化の日本医療科学大学においては、かなり有効な働きかけとなると思います。
    具体的なコストや、人的支援は、どれくらい必要なのでしょうか?

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