2016年6月24日金曜日

Mayworks −労働者のアートフェスティバル−

こんにちは、入澤です。
今日はMayworksという5月に一月にわかって開催されていたアートフェスティバルを紹介します。



Mayworksは1986年から30年以上にわたって開かれている労働者文化に焦点を当てたアートフェスティバルであり、トロントとヨーク地区の様々な労働組合、大学そしてアーティストたちによって運営されています。このアートフェスティバルの目的は社会の中で周縁に位置する労働者文化をセンターステージに持ち込むことであり、構造的な差別や不正義と闘うことが目指されています。また、労働者文化に焦点を当てていますが、インターセクショナリティつまり重複した抑圧の存在が常に意識されており、女性、ファーストネーション、障害者、LGBTの労働者を表象するように努められています。

5月のメーデーでのデモを皮切りに、20以上の講演・討論会、ワークショップ、展示会、パフォーマンスが行われていました。(プログラム→http://www.mayworks.ca/wp-content/uploads/2016/04/Mayworks-2016-Program-Guide.pdf)。僕もそのうちのいくつかに参加しました。

■ Mapping Our Work

これはトロントの労働運動の歴史を学ぶウォーキングツアーで、Mayworksの期間外にも定期的に開催されているようです。運営主体は労働団体とジョージブラウンカレッジ。僕が参加したときのテーマは女性の労働運動だったので、ツアーのガイドも全員女性。参加者も8割ぐらい女性でした。



写真は労働省前での解説の場面。労働者の怪我と怪我による失業などのリスクについて学びつつ、過去にどのような運動がここで行われたのか聞きました。ツアーは他にも保育所の増設を訴える女性労働者の運動に縁のある場所など巡り、最後は同日開催されていた産休のタイミングで行われた黒人女性の解雇に対する抗議デモに合流。


下の写真はツアーでもらったトロントの労働運動関係施設の地図。表紙は19世紀の市庁舎前の様子らしい。奥にあるのが市庁舎。裏手がすぐにスラムだったことがわかりますね。



マイノリティの活動の歴史を本や映像、授業で学ぶのではなく普段歩いている街中で学ぶというのはとても意味があることに思えました。活動家は街に繰り出すわけですからね。自分が立っている場所は今までにも多くの人が志を共有し闘った場所だと知っていると背中を押される思いがするのではないでしょうか。

■ Behind the Fare



トロントのタクシー運転手とUberという配車サービスの衝突を描いたドキュメンタリー映画。Uberは普通自動車免許と自動車を持つドライバーと契約し、ドライバーをアウトソーシングすることで大幅なコストカットに成功し、世界的に拡大した配車サービスです。利用者としては格安でタクシーと全く同様のサービスを受けられるので喜ばしいものです。ただ、カナダをはじめ多くの国ではタクシー運転手という職業は職にあぶれた移民層の受け皿として長年機能してきました。Uber側から見るとタクシー業界は利権を守る硬直化した業界と捉えられるのですが、タクシー業界は価格をある程度高く設定することで移民層の生活を守ってきた自負があります。

映画の中に出てくるタクシー運転手はインドからの移民で、祖国ではエンジニアだったそうです。修士の学位を持っていてもタクシーの運転手になるしかないというのはよくあること。こういった現実を見据えた上で政策としてしっかりと業界を保護して欲しいとタクシーの運転手たちは立ち上がり、闘いました。そしてまだまだ闘いは続いています。


映画の上映の後には監督等のトークセッションがあったのですが、監督が同年代で驚きました。大学院ではカルチャル・スタディーズを専攻していたとのこと。若い世代のアーティスト/活動家がついこの間(昨年の後半)発生した社会問題についてドキュメンタリーをすぐに作製して世に出すっていうのはすごいなぁ!と思いました。フットワークの軽さ、スピード感がすごい。


■ Marx in SOHO



米国の歴史家ハワード・ジンが脚本を書いた独白劇。冷戦後、「マルクスは死んだ」と言われる時代に「死んでないぞ」と死んだはずのマルクスが甦り、面目躍如のために聴衆に語りまくるという設定。風刺の効いた巧みな台詞まわしがとても面白く、全く飽きることなく最後まで楽しめました。マルクスが「私はマルクス主義者ではない」と自分の思想が理解されないことのいら立ちを語ったり、資本論のつまらなさについての自虐ネタを披露したりととにかく言葉の切れ味がすごかった。劇の多くの時間を割いて自分の人生や家族のことをマルクスが語るのですが、特にバクーニンを時間をかけてバカにするしつこさが愉快でした。

マルクスが主人公の独白劇なんて誰が見るんだろうと思っていたけど、会場は超満員。立ち見も出ていました。客層も老若男女幅広く、色んな人種がいました。前からずっと思っていたけどカナダでは「マルクスは死んだ」なんてことはないのかも。

■ Superbutch


Butchとはレズビアンの男役の女性のこと。カルチャル・スタディーズのコースの教授も言っていたのですが、Butchはメディアにあまり表象されることがない社会集団です。このイベントはButchのファッションに焦点を当てたイベントで、ファッションショーや衣服の販売、そしてパネルディスカッションが行われました。ファッションショーなんて言ったことなかったのですが、めっちゃ感動。Butchとして自分の着たい服を誇りをもって着るモデル達はとてもかっこ良かったです。



パネルディスカッションにはモデルやデザイナーだけでなく大学の先生達も参加していました。とくにヨーク大学の先生が説明していたトロントのButch達の歴史が印象に残っています。歴史の教科書では扱われない=どうでもいいということでは決して無い。忘却された歴史を掘り起こし自分たちの位置を知ることで次に向けて力強い一歩が踏み出せます。





それにしても俺は姿勢が悪い。

最後に

見てきたように5月はメーデーに始まる労働者のための月ですが、6月はプライドパレードでクライマックスを迎えるLGBTQのためのプライド月間です。なんだかんだ毎月なんかやってるかも。こういう風に特定のイベントの日だけマイノリティについて考えるとかじゃなくて「月」レベルのある程度長い期間を設定して集中してイベントを行うのは効果があるだろうなぁと思いました。ただ、こちらの教育の世界ではBeyond Heros and Holidaysが合言葉になっています。マイノリティの中のヒーローについて学んだり○○月間だからその月にだけマイノリティのことを勉強したりっていうのは限界があるからその先に行こうよ!って意味です。カリキュラム全体にどう社会正義ための学習を組み込んでいくかが常に模索されている。最後にちょっと教育についてふれて今回は終わりたいと思います。

では!




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